出張に関する労働時間や旅費の取り扱いは、多くの企業や働く人にとって重要なテーマです。近年の調査によると、民間企業における出張旅費の支出は依然として高い水準にあり、財務省「2021年 民間旅費実態調査報告書」より、全国の民間企業で年間に支出される出張旅費が数千億円規模にのぼることが明らかになっています。
このような背景から、出張に伴う移動時間の労働時間認定や旅費規定の整備は、企業の適切な労務管理だけでなく、社員の働きやすさ向上にもつながる重要な課題です。本記事では、この調査結果を踏まえつつ、出張の移動時間が労働時間に含まれるかどうかの判断基準や、旅費精算の実務的なポイントをわかりやすく解説していきます。
出張の定義とは?まずは基本をチェック
出張と通常勤務の違い
まずは「出張の定義」をしっかり押さえましょう。出張とは、通常の勤務場所以外で、会社の指示により一時的に業務を行うことを指します。たとえば、東京のオフィス勤務の社員が大阪の取引先へ訪問する場合や、地方へ1泊2日の営業に出かけるケースがこれにあたります。
出張と通勤は違います。通勤は自宅から職場までの移動であり、労働時間とはみなされません。一方、出張は業務命令のもとに行われるため、労働時間や旅費精算のルールが適用されます。
出張の種類とその特徴
- 日帰り出張
当日中に自宅へ戻る出張です。旅費は交通費が中心で、日当が支給されないケースもあります。 - 宿泊を伴う出張
1泊以上する出張で、交通費に加え宿泊費や日当が支給されるのが一般的です。 - 長期出張
1週間以上の滞在となることもあり、生活費や手当の取り扱いが複雑になります。企業によっては特別手当を設けている場合も。
移動時間は労働時間に含まれる?判定のポイント
労働時間に含まれるケース
法律上、移動時間が労働時間になるかは、「移動中に業務を行っているかどうか」が重要です。たとえば、
- 車や社用車で運転をしている場合
- 新幹線や飛行機の移動中に資料作成やメール対応をしている場合
- 取引先との電話会議や打ち合わせをしている場合
これらは、労働時間としてカウントされます。
労働時間に含まれないケース
逆に、単純に移動しているだけ(例えば、座って休んでいるだけ、業務をしていない場合)は、原則として労働時間に含まれないとされています。ただし、企業の就業規則や労使協定によって異なることもあるため、必ず確認が必要です。
出張旅費とその規定の考え方
出張旅費規定とは?
企業は「出張旅費規定」を設けて、交通費、宿泊費、日当などの支給ルールを明確にしています。これにより、出張後の精算をスムーズに行います。
一般的な規定には、以下のような項目があります:
- 交通費(公共交通機関の実費、社用車利用時のガソリン代等)
- 宿泊費(上限設定があることが多い)
- 日当(出張中にかかる食費や雑費をカバーする目的で支給)
出張手当とは?
「出張手当」とは、出張中にかかる諸費用を補填するために支給される金銭で、交通費や宿泊費とは別に支払われます。たとえば、昼食代や移動中の軽食、雑費などが対象です。
金額は会社によって異なりますが、日帰り出張で1,000円~2,000円程度、宿泊を伴う出張で3,000円~5,000円程度が多いです。
日当と消費税の扱い
出張日当が消費税の課税対象かどうかも気になるところです。結論としては、出張日当は労働の対価としての性質が強いため、消費税の課税対象外となります。これは国税庁の通達でも示されており、日当は社員への支給金額の一部として取り扱われます。
出張が多い仕事・職種とは?
出張が多い仕事の特徴
「出張が多い仕事」には営業職、コンサルタント、ITエンジニア、建設・設備業などが挙げられます。これらの職種は、全国を飛び回ってクライアント対応や現場調査を行うため、出張頻度が高くなる傾向があります。
女性の出張事情
近年は「出張の多い仕事を選ぶ女性」も増加しています。柔軟な働き方やテレワークの普及で、出張と家庭の両立がしやすくなっているのが背景です。女性の視点を活かした営業やコンサルティングも増え、業務の幅が広がっています。
長期出張の場合の注意点
生活費や手当の管理
長期出張になると、宿泊や食費だけでなく、洗濯代や交通費の追加など生活コストがかさみます。会社によっては長期出張専用の手当や宿泊費の特別支給がある場合もあるため、規定をよく確認しましょう。
移動時間と労働時間の記録
長期出張は移動時間も長くなるため、労働時間との区別をしっかりつけることが重要です。勤怠管理システムやタイムカードで正確に記録し、トラブルを防ぎましょう。
まとめ:移動時間と労働時間の扱いは“事前確認”がカギ
- 出張の移動時間が労働時間に含まれるかどうかは、「業務中かどうか」が大きなポイントです。
- 旅費精算や出張手当は、必ず自社の規定や労使協定に従いましょう。
- 長期出張の場合は生活費や労働時間の管理に特に注意が必要です。
出張前には持ち物の準備だけでなく、出張手当や旅費規定も事前に確認しておくと安心です。
出張が多い仕事では、これらの基本を理解し、効率的に働くことが快適な業務遂行につながります。